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規制産業のインシデント管理

投稿:2017年11月2日   |    更新:2022年6月10日

オンコール状態を保つことは難しく、時にそれは受け入れがたい負担となります。しかし、規制業界 (国の規制により 新規参入や事業拡大が制限されている業界)で働く場合、組織に課せられるインシデント管理への要求は日増しに増大しています。この記事では、規制業界におけるソフトウェア関連のインシデント管理の基本原則について説明したいと思います。

インシデント、規制、コンプライアンス

まず、ソフトウェア関連のインシデントが規制業界で何を意味するのかを簡単におさらいしてみましょう。ソフトウェア開発やIT部門の担当に「インシデント」とは何か定義するように尋ねてみると、大概はダウンタイムやアプリケーションの応答時間の問題に言及するかと思います。しかしこれは、もう一方の重要な要素を見落としている場合があります。それはセキュリティー – 侵入、データ盗難、機密データ保護の失敗などです。

規制産業での「インシデント」という用語は、ダウンタイムやセキュリティー上の問題をはるかに超えた意味を持ちます。それは、組織またはプロダクト、またはサービスを規制の準拠外に追いやってしまうことを意味します。

水道会社にとっての問題を例に挙げると、給水中に大腸菌が入り込んでしまった場合がそれにあたります。銀行でいえば顧客の財務データが失われた場合、病院にとっていえば生命維持システムの重大な欠陥があった場合です。規制遵守が危機に瀕している場合、公共の安全や重大なデータ損失、主要サービスの中断などの事故は、ダウンタイムを伴うものほど深刻になるものです。

コンプライアンス – Stakesとは何か

規制業界に属する組織にとって最も根本的な問題の1つは、適用される規制を遵守する必要があるということです。業界およびインシデントの性質によってコンプライアンスの違反が発生する可能性があります。

  • 罰金、手数料、またはその他の民事上または行政上の罰金
  • インシデントの影響を受ける組織または個人による訴訟またはその他の訴訟
  • 業界内での作業に必要なライセンスまたはその他の証明書の保留または紛失
  • 業界内または一般の人々の目にある評判の喪失
  • 極端な場合には、責任ある個人の刑事告発、有罪判決、懲役刑

言い換えれば、Stakes(危険度)は非常に高くなる可能性があります。インシデント管理の手続きを裁判官に説明する状況に陥るのは、非常に望ましくないものです。

必要性とベストプラクティス

このような厳しい条件の下でインシデントをどのように管理すればよいのでしょうか。最高のインシデント管理は、コンプライアンスに関わる問題になる前にすべての潜在的なインシデントを処理するという予防対策です。それは実際の状況下では必ずしも実現できないため、法的要件と実用的必要性の両方を満たすインシデント対応計画を立てることが重要です。これを行うには、次の要因を考慮する必要があります。

  • 規制要件とガイドライン インシデント管理、予防、対応に関しては、規制当局の要求事項に常に従ってください。これらは業界および関連機関によって異なりますが、大抵は正式なインシデント対応計画、ITインシデント対応チーム、インシデント対応手順およびアクションの正式文書が含まれます。 例えば、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act )またはPCIDSS(Payment Card Industry Data Security Standard)の下で運用されている組織には、文書化されたセキュリティレスポンスプランとレスポンスチームが必要です。連邦情報セキュリティ管理法(FISMA) には同様に、連邦機関に対する詳細な事故管理および対応ガイドラインが含まれています。不明点がある場合は組織が対象とする機関と要件を確認し、すべての要件を完全に遵守しているか確認するべきです。
  • 業界ガイドラインとベストプラクティス これらは業界によって異なります。業界全体の専門組織は多くの場合、一連の推奨プラクティスを提供しています。業界に特定のガイドラインがない場合、Common CriteriaおよびCommon Evaluation Methodのドキュメントは、一般的なITセキュリティおよび公衆安全の問題を理解するための有用なフレームワークを提供しています。

一般的な考慮事項

すべての規制産業およびすべての規制の枠組みに適用される基本的な考慮事項がいくつかあります。

識別

障害やその他の誤動作が直接的または間接的にコンプライアンスの問題につながる可能性のある機密システム(アプリケーション、ネットワーク、サービスなど)をすべて特定します。例えば、クライアントの医療記録を含むデータベース、または公益事業のための電力配分を管理するプログラムは、この項目に該当する可能性が高いです。尚、簿記ソフトウェアはこの文脈ではおそらく重要なシステムに該当しません。

プリベンション

インシデント管理の最新トレンドは、システム障害を未然に防ぐことです。つまり、システムの障害だけでなく、障害につながる可能性のある状態についてインシデント対応チームにあらかじめアラートを出す必要があります。セキュリティーに敏感なシステムの場合は侵入を試みる活動やセキュリティーソフトウェア自体のパフォーマンスの低下を示唆する活動である可能性を探る必要があります。公共安全が危機に瀕しているシステムでは、主要メトリックの異常な動作を探る必要があります。言うまでもなく、プリベンションにはデータのフルバックアップ、必要に応じてスタンバイ状態のフルバックアップシステムが含まれます。

問題がコンプライアンスに関わる問題に変わる前に問題を把握するには、インシデント対応チームが完全に同期している必要があります。このような状況では秒単位での対応が重要です。このため、対応担当者を事前に定義してエスカレーションポリシーを明確にし、複数のシステムからのメトリクスへのアクセスを統合して問題を統一的に把握することが不可欠です。

プライオリティ

事実上、既存のインシデント管理のトリアージ(行動順位決定)に別レベルの優先度を追加し、すべてのコンプライアンス関連のインシデントを既存の優先度よりもさらに優先させる必要があります。例えば、簿記システムと在庫システムの両方がクラッシュし、同時に医療記録データベースが天気予報のように不安定になった場合、もし対応できるITスタッフが十分にいなかったとしても、会計担当者と倉庫担当者は緊急チームがデータベースに対応するまで待つ必要があります。また、公共安全に関与している場合は、重大な災害が発生した直後に、重大なシステムを運用する準備ができている必要があります。

これらはとても恐ろしいことのように聞こえるかもしれません。規制当局や裁判官が規制を適切に遵守しなかったと判断した場合、企業が大きなインシデントに対して費やさなければなければならない費用ははるかに高くつく可能性があります。結論として予防的なインシデント管理は、企業にとって自身を守る最高の防衛手段となるはずです。

インシデント対応のプロセスやワークフローを改善するためのリソースを探している場合は、オープンソースのインシデント対応文書金融サービスソリューションの要約を参照して、PagerDutyがどのように規制対象産業を支援しているか確認してみてください。

※このコンテンツはwww.pagerduty.com/blog/の抄訳です。